インプラントブログ

2012年5月16日 水曜日

なぜチタンが選ばれる?

なぜ、インプラント治療にはチタンが選ばれるのでしょうか。
ブローネマルク博士の、骨とチタンが結合するという、世界の常識をくつがえしたオッセオインテグレイションの発見こそが、近代インプラントの夜明けでした。依頼、多くの研究が行われ、オッセオイングレイションは科学的な根拠に裏付けされ、チタンは歯科医療だけでなく医学の多くの分野で広く応用されています。
抜け落ちた菌の代わりに何らかの大替物を顎骨に差し込んで固定し、歯と同様に機能させようという試みは古代から行われていたようです。紀元前1世紀ごろのローマ時代の遺跡から、顎骨に埋入された錬鉄製の骨内インプラントが発見されています。しかし、この鉄製インプラントは歯の代わりに機能していた可能性はあるものの、チタン製インプラントのように長期間良好に機能することはなかったと想像されます。
生体に害を及ぼさない金属はチタンだけではなく、金などもそうです。しかし金属材料に求められる性質は為害作用がないことではなく、生体への親和性(細胞に好まれる)とともに、すぐれた耐久性・耐摩耗性などの機械的性質が要求されます。
近代インプラントで用いられる純チタンは、表面に強固な酸化膜ができることでチタンを保護するとともに、生体への適合性が向上すると考えられています。さらにチタンは軽量で高い硬度をもっており、咬合力を受け止める機械的強度があります。その反面、切削などの機械的な加工は一般的にむずかしい金属とされていますが、技術の進歩にともなって、現在では良好な精度をもった製品が安定して提供されています。
とはいえ、なぜチタンは骨とそれほどガッチリと結合するのでしょうか。私は、先に述べた酸化膜の存在だけでなく、チタンの結晶構造にその理由があるのではないかと考えています。
チタンの結晶構造は6万晶系とよばれる6角柱の形をしています。実は、骨や歯を構成しているヒドロキシアパタイトの結晶構成も6万晶系なのです。分子レベルで形が類似していることで、細胞がチタンを異物として排除せず、むしろ歯槽骨のなかに積極的に取り組んでガッチリと結合するのではないかということです。この幸せな誤解(?)が生むありがたい現象は、偶然に、あたかも科学の神様に与えられたがごとく発見された、といえるかもしれません。
チタンはいまや私たちの生活のなかで、たいへん身近な金属です。ゴルフクラブだけではなく、UVカット製品にもチタンが使われています。私たちは日常的に、チタンの恩恵にあずかっているというわけです。

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